大重 雄暉さん 誰でも来られる場所を、作っていけたらいい

地域の魅力を「ダイレクト感がいい」と表現する大重さん。
茨城県石岡市八郷(やさと)地区では、山で切られた木が目に止まる場所に積まれており、トラックで運ばれて行くという光景を見ることができる。
生産から地域の木が使えるものに変換されていくまでの、中間の立場での活動をうかがった。

インタビューの概要


--八郷について、都会との違いや魅力を教えてください。

人が少ないですね。
山奥ではなく、山と人の住んでいる場所が隣接しているという面白さがあります。
そしてダイレクト感が魅力ですね。


--「ダイレクト感」とは?

都会にいると、何がどういった経緯でというモノのことがみえづらいと思います。
しかし八郷では、山で切られた木がそのあたりに積まれて、トラックで運ばれて行くという光景を目にすることができます。
材料としての木の手触りや、いろいろなことのダイレクト感がいいです。


--八郷はどんな街なのでしょうか?

例えば石岡市は、昔ながらの町で看板建築などが有名です。

一方で八郷地区は、町ではなく、農村ですね。筑波山を中心とした、山麓の中に囲まれた盆地のようなところです。
農業や、果樹の栽培が盛んで「リンゴの南限、みかんの北限」と呼ばれています。

起伏がある土地なので、霞ヶ浦近辺などと比較すると、近代化が進められないという側面もあります。


--地域おこし協力隊が、八郷へ移住したきっかけになりましたか?

4人で地域おこし協力隊を機に、八郷に移住しようという話はありました。
しかし、協力隊はきっかけのひとつに過ぎず、協力隊がなかったとしても、八郷には来ていたと思います。
すでに好きな場所となっていた八郷に、いたかった。


--協力隊では、農林業を担当されていましたね。

建築学科ということもあり、もともと素材に興味がありました。
その源である生産のところから知りたいという気持ちがありました。


--その一環に、炭焼き小屋支援活動がありますね。

これは、生産から、地域の木が使えるものに変換されていくことの中間にいることができました。

今、製材所に勤めていますが、森に入って採り出していった木がその後どうなるのか。
そういったことが、中間にいれば知ることができます。

山には様々な木がある一方で、規格に合わせた角材の流通に価値が集中しています。
規格外で使い道のない木は「ながら」と呼ばれますが、そういった木の活用も手がけました。


--大重さんのこれからの野望(笑)があれば教えてください。

野望は、ないですね(笑)。
目の前に現れたことに対して、この方がいいだろうと。それだけでやっています。

八郷について「こういう地域だ」「こんな場所だ」と、あえてまとめない方がいいと考えています。
まとまっていない八郷を、これからもそれぞれ大事にしていくのがいい。

「おばあちゃん家」もそうですが、山も開いていきたいです。
誰でも来られる場所を、古民家や山に作っていけたらと、思っています。


大重さん

大重 雄暉(おおしげ・ゆうき)・プロフィール

2013年度 武蔵野美術大学造形学部建築学科 卒業
2016年度 大阪市立大学大学院 工学研究科都市系専攻前期博士課程修了
ムサビ在学中に「アートサイト八郷」に運営として関わる。
第1期石岡市地域おこし協力隊として、放置林の手入れや、その林内の木を使ってものづくりを行う。
「アートサイト八郷」の舞台となった「おばあちゃん家」、協力隊任期中に同期メンバーで立ち上げた「シェアハウスBONCHI」などを拠点に活動中。